花の名は、ダリア
悲しげだったダリアがみるみる青ざめ、その表情が恐怖に彩られていく。
慌てて身を引こうとするものの、いつの間にか顎がガッチリ掴まれていて、顔を背けることすらできない。
「ど…どうしたの?ソージ。
コワいわ、コワいわ…」
ダリアはプルプルと震えながら訴えた。
悪魔の微笑み効果で彼女の心は取り戻せたようだが、そんなこたぁ、今は気にしちゃいられない。
ソージは尚も口角を吊り上げる。
「ねェ、教えてくださいよ。
ソイツの名前は?
なんでそんなヤツ、『貴族』にしたンです?
ねェェェェェ?」
「ぁゎゎゎゎ…
な、名前はサムよ。」
…
ハイ?
驚きの回答に、ソージは黒い笑みを消して目をパチパチと瞬かせた。
「『サム』?
サムって…
中一英語の教科書にケンの友人として登場しがちな、あの、サム?」
「そうよ。
横並びでボブなんかもあるわね 。」
Oh…
まさか『貴族』が、そんな安直な…いやいや、メジャーなお名前だったとは。
なんつーか、『ヴラド三世』的なのを想像してたわ。