花の名は、ダリア

サドキチの恐怖が消滅して、ホっとしたのだろうか。

俯いたダリアが、ポツリポツリと語り出す。

医師だったサムと出逢ったのは、遠い遠い昔の話。

彼は言った。

『君の血は病に冒されているだけだ』
『治療すれば、人間と同じように生きられる』

そして…

『けれど治療法を見つけるには、医学の進歩は緩慢すぎるし、僕の命は短すぎる…』

ダリアはサムを生まれ変わらせた。

いつの日か必ず、二人で人間になろうと約束して。

だが、その約束が果たされることはなかった。

始めはサムも、熱心に研究に取り組んでいた。

ヴァンパイアの性質を把握し、『貴族』『仕えし者』『穢れし者』と分類したのも、彼だった。

純血のヴァンパイアを『ノエル』と名付けたのも。

流れる時の中で、徐々に彼は変わっていき…


「サムは『仕えし者』ばかりの国を作ろう、なんて言い出したの。」


「はぁ? ナンデ?」


「『世界を征服するze!
君はクイーン、僕はキングさっ☆』だって。」




世界征服…だと…?

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