花の名は、ダリア
『私がいるンだから、アナタは一人キリじゃないわ』
月に照らされた縁側で、ダリアがくれた言葉を思い出す。
優しすぎるよ。
誰よりも深い孤独を抱えていたのは、貴方だったのに。
「俺がいるんですから、貴方はもう一人キリじゃありませんよ。」
そのセリフは、優しさと労りに満ちた彼女のソレとは異なり、醜いエゴの塊にすぎない。
でもね?
誓って嘘はない。
目の縁を指でなぞると、反射的に伏せられる長い睫毛。
現れたダリアの瞼に唇を押し当てて、ソージは薄く微笑んだ。
「みんなと同じじゃなくても、俺が貴方の傍にいますから。」
「…本当?
ソージは離れていったりしない?」
「絶対に離れません。
てか、絶対に放しません。」
凍った結晶が溶けて流れ落ちたのを感じると、唇を鼻先、そして頬へと滑らせて。
「…本当?
世界征服だなんてバカ言って、ヒドいコトしない?」
「中二病患者と一緒にしないでください。
怒りますよ?」
擽るように耳を甘噛みすると、やっとダリアはうふふ、と笑みを漏らした。