花の名は、ダリア

約束よ、と言って大粒の涙を零しながら微笑むダリアを、心の底から愛しいと思う。

何物にも変えがたい、唯一無二の至宝だと思う。

だからこそ、理解できない点もある。


(サムってバカは、本当に世界征服なんてしたいのか?)


首に腕を回してしがみついてくるダリアの髪を甘やかすように撫でながら、ソージは思考を巡らせていた。

本当にそんな理由で、彼女を裏切ったのだろうか。
本当にそんな理由で、彼女を手放したのだろうか。

この世界全てよりも価値がある、一輪の麗しい花を。

それに大体、世界征服のために『仕えし者』ばかりの国を作るってのも、おかしな話だ。

本気でショッカーやりたきゃ、忍んで生きるのをやめるだけでいい。

姿を現し、能力を解放し、各国の要人数人を見せしめとして『穢れし者』にして暴れさせ、ヴァンパイアここにあり、と名乗りを上げればいい。

人間たちが思い込んでいる弱点どころか、核爆弾すら意に介さない不死者っぷりを、見せつけてやればいい。

世界は抵抗する気など失い、足元に平伏すだろう。

問題はデリケートなお肌だが…
これはまぁ、昼間に日陰でニンニクでも齧ってみせりゃ、『やっぱチート』なんつって、みんな勘違いしてくれンだろ。

ほら、な?
ドコに『仕えし者』の国なんて作る必要がある?

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