花の名は、ダリア

「大丈夫?」


走る速度を少し落としながら、ヨシュアはデボラを振り返った。


「大…丈夫…」


微笑みながらデボラは答えるが…

ハイ、嘘ー。

その汗、その息切れ、どー見ても大丈夫じゃない。

丁重に扱われていたとは言え、長期間監禁状態にあったのだ。

いきなりのマラソン大会(障害物もあるヨ☆)は、デボラにはかなりの負担だろう。

それでも、泣き言一つ言わず気丈に振る舞う双子の姉の手を、ヨシュアは強く握りしめた。


「もうすぐ洞窟だから。
着いたら一度休もう。」


「うん…」


「そこからは歩いて行けるよ。
中の構造が複雑だから、誰も追っかけてこれないし。
てか、森に入ってからはナチス兵なんて一度も見てないし。
きっともう安全」


ガサ…
ゴっ


「ぅっ」


『安全だよ』って、言いたかったのね。
でも、なんか呻き声みたいの、聞こえたよね。

気を抜くのは早かったか。

足を止めたヨシュアは、デボラを背に庇って刀を構えた。

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