花の名は、ダリア
「ガキっつーのは、感じたコトを打算も偏見もなくありのままに受け入れる、究極の単細胞バカですからねェ。」
…
ソレってさ、素直でカワイイって意味だよね?
自覚もないまま子供好きを暴露してしまったソージから目を逸らし、ダリアは笑いを堪えた。
もう彼女からは、ソージの嫌いな悲しい表情は消えている。
口の横には、可憐なエクボまで浮かんでいる。
けれど…
「別れの挨拶に行きますか?
追いかければ間に合いますよ。」
再び投げ掛けられた問いに、やはり再び首を振った。
「んーん、やめておくわ。
彼らが大人になった時、今日までの悪夢と一緒に私のコトも忘れていてほしいの。」
『覚えていてほしい』ではなく、『忘れていてほしい』。
それはダリアの優しさ。
だが…
(無理だろ。)
うふふ、と笑いながら、しなやかな指で髪を耳にかけるダリアに、ソージは心の中でツッコんだ。
確かに、辛かった日々はこれからの穏やかな日々に埋もれ、ゆっくりと記憶の奥深くに沈んでいくかも知れない。
けれど、きっと、彼女だけは別。