花の名は、ダリア
太陽は幾度も沈み、無為な日々が過ぎていく。
季節は幾度も巡り、無為な日々が過ぎていく。
そしてダリアの成長が完全に止まった頃、一つ目の変化が訪れた。
女がやって来なくなった。
髭のジジィたちも、また。
だがダリアは、一人ポツンと神殿に居続けた。
今までずっとそうしてきた彼女は、そうやって生きることしか知らなかったのだ。
太陽は幾度も沈み、無為な日々が過ぎていく。
季節は幾度も巡り、無為な日々が過ぎていく。
そして二つ目の変化は、激しい雨が長く続く時期の、ある夜に訪れた。
「起きて、起きて!」
痛いほど肩を揺すられ、目を覚ましたダリアは…
「起きなさい!早く!」
自分を叱咤する、変わり果てた女を茫然と見上げた。
女は以前より白髪が目立つ髪を、クシャクシャに乱していた。
拘束されていたかのように、手首に血を滲ませていた。
そして、窶れきった顔に見慣れた微笑みはなく、まるで夜叉の形相だった。
「急いで!
ココを出るのよ!」
ダリアの腕を女が引く。
けれどダリアは、震えながら女の手を振り払った。