花の名は、ダリア

怖かったのだ。

ダリアは今まで、女も含めて穏やかで物静かな人間しか見たことがなかった。

なのに、この険しい表情と荒らげた声。

ダリアは今まで、何もない日々しか送ってこなかった。

なのに、この非常事態。

ただ、怖かったのだ。

イヤイヤするように首を振り、ガタガタ震えて、ポロポロ涙を零すばかり。

さらに険しく顔を歪めた女は、そんなダリアを抱えて無理矢理立たせようとした。

が…

ハイ、そこまで。

神殿に、多くの男たちが踏み込んできた。

あっという間に引き離される、ダリアと女。


「逃げて!
逃げるのよ!!」


と叫びながら男たちに連れ去られる女を、ダリアは訳もわからず見送ることしかできなかった。

残ったのは、ダリアと髭のジジィたち。

ジジィたちも女と同様、険しい顔でダリアに言った。


「おまえは悪魔だ。」


「何も食べず、年も取らず、存在し続けられるのが、なによりの証拠。」


「この長雨も、疫病も、飢饉も、全ておまえのせいなのだ。」

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