花の名は、ダリア
それからダリアは、髭のジジィたちの手で、松明を持つ人々が集まる広場に引きずり出された。
何もわからない子供を、自分たちの都合で神に祭り上げた時と同じように、今度は悪魔に仕立て上げて全ての罪を負わせ、火炙りにしようというのだ。
初めて見る多くの人間は、『悪魔を殺せ』と口々に叫び。
初めて見る外の世界は、炎で赤く染まり。
唯一見慣れていたはずの女は、悪魔の従者として一足先に火にかけられ、誰ともわからぬ姿に成り果て‥‥‥
「そこからは、ね?
もっと真っ赤。」
うふふ、と含み笑いを漏らしながら、ダリアは言った。
「私はソコで、この力と牙の使い途と、血の甘さを知ったの。
オジーチャンたちの言う通り、私は悪魔だったのよ。」
つまり、辺り一面血の海に沈めちゃいましたヨ、と。
とんでもねー打ち明け話だと思うのに、その時ねぐらにしていた宿に着くまでの短い時間で、彼女はペロンと語った。
ドコかでダレかに教わった、面白い話を聞かせるように。
『長く生きてる間に、必要な感情をいくつか落っことしてきちゃった』
と、以前ダリアは言っていたが、おそらくソレは間違い。
赤い雨を降らせたその夜、彼女は感情を失った。
いや、彼女は壊れてしまったのだ。