花の名は、ダリア
無性にムカつくンだよね。
クっソ腹立つンだよね。
他でもない、自分自身に。
どうして俺は、その時ダリアの傍にいなかったンだ?
俺なら、彼女にこんな真似はさせない。
俺なら、彼女に後悔なんかさせない。
俺なら、もっと上手に彼女を壊せたのに。
閉じ込めて。
守って。
うんと甘やかして。
『世界で一人キリ』
ではなく、
『柔らかな暖かい檻の中で二人キリ』
なんだと、信じこませることができたのに。
「…チっ」
長い髪を濡らす雨粒を振り払いながら、俺は舌打ちした。
時を巻き戻す力なんてないンだから、『今できるコト』をするしかねェよな。
俺は玄関には向かわず、窓から部屋に忍び込んだ。
気配を消してスヤスヤと眠るダリアに近づき、彼女の隣に片膝を落とす。
細い背中と膝裏に腕を回して、抱き上げようとした時…
俺の顎から滴った雨の雫が、ダリアの白い頬を濡らした。
「んー…」
ダリアが微かに身じろいで、うっすらと目を開く。