花の名は、ダリア

「どう?ソージ。
アヤシィと思わない?
私たち、とうとうサムの尻尾を掴んだのかも知れないわ。」


「…
そうですね。
さぁ、そろそろ夕飯ですよ。」


PCから目を逸らしたソージは、ダリアの頭に軽く手を乗せた。

そして踵を返し、キッチンに戻ってフライパンの蓋を開け…


(尻尾を掴んだ、だって?)


楽しいクッキング中にはとても見えない冷徹な表情で、仕上げに取り掛かった。

『新しい命』なんてフレーズ。
『ノエルちゃん』なんて萌えキャラ。

そして『仕えし者の国』を連想させる、『使徒の国』なんて中二臭のキっツイ団体名。

あからさますぎる。

コレは、追われているコトを見越して、あえてバラ撒いた手懸かり。

つまり、餌だ。

尻尾を掴んだンじゃない。
相手に誘い込まれているのだ。


(ナメた真似しやがって。)


フライパンの中身を手早く炒めながら、ソージは不敵に口角を上げた。

引き締まった頬。
獰猛な眼光。

その表情を見て、乙女のように可憐な容姿、などと称するバカはいないだろう。

今の彼は、獲物を見つけて舌なめずりする、腹をすかせた狂暴な狼。

< 333 / 501 >

この作品をシェア

pagetop