花の名は、ダリア

進入禁止どころか見え透いた拒絶を食らって、ソージは見事撃沈した。

だが、肩を落としたソージを見て、彼女はさらに困った顔をする。


「ごめんね?どーしよ?
前に『ノエル』って呼ばれてたコトはあるンだケド、それは名前じゃないし…
どーしよ?どーしよ?」


両手で白い頬を押さえて、目を泳がせて、オロオロ。

あらら?

ガチで困ってるの?
じゃ、名前忘れたってのも、ガチなの?

微かに希望の光を取り戻した瞳で、ソージは彼女を見上げた。


「ノエル?
名前じゃなけりゃ、なんなんです?」


「えとね、『ノエル』はね。
語源はラテン語で、『誕生』とかって意味なンだって。」


ラテン…???
日本人、ヨクワカンナイヨ。


「つまりね、私が…

『始まりの血』ってコト。
シリアルナンバーみたいなモンなの。」


シリアル…???
やっぱ、日本人、ヨクワカンナイヨ。

てかソレ、異人日本人関係なくヨクワカンナイ事情が含まれてねェか?

だが、少しトーンダウンしたその声から、よーくわかった事情もある。

彼女は、『ノエル』と呼ばれることを嫌っているようだ。

< 34 / 501 >

この作品をシェア

pagetop