花の名は、ダリア
進入禁止どころか見え透いた拒絶を食らって、ソージは見事撃沈した。
だが、肩を落としたソージを見て、彼女はさらに困った顔をする。
「ごめんね?どーしよ?
前に『ノエル』って呼ばれてたコトはあるンだケド、それは名前じゃないし…
どーしよ?どーしよ?」
両手で白い頬を押さえて、目を泳がせて、オロオロ。
あらら?
ガチで困ってるの?
じゃ、名前忘れたってのも、ガチなの?
微かに希望の光を取り戻した瞳で、ソージは彼女を見上げた。
「ノエル?
名前じゃなけりゃ、なんなんです?」
「えとね、『ノエル』はね。
語源はラテン語で、『誕生』とかって意味なンだって。」
ラテン…???
日本人、ヨクワカンナイヨ。
「つまりね、私が…
…
『始まりの血』ってコト。
シリアルナンバーみたいなモンなの。」
シリアル…???
やっぱ、日本人、ヨクワカンナイヨ。
てかソレ、異人日本人関係なくヨクワカンナイ事情が含まれてねェか?
だが、少しトーンダウンしたその声から、よーくわかった事情もある。
彼女は、『ノエル』と呼ばれることを嫌っているようだ。