花の名は、ダリア
零れ落ちそうになる涙を、ダリアは羽織の袖で拭った。
『捜すな』とは、言われなかった。
『来るな』だから、この穴からではなく。
『罠にかかるな』だから、赤いボタンは押さずに。
ソージを捜しにいけばイイの。
捜して、見つけて、二人で『帰る』。
ほらね?コレなら無問題。
落ちていったワケだから…
(下の階とか、地下とか…
いずれにしても、ソージはこの建物の中にいるわ。)
一人で強く頷いて。
ポニーテールにしたぺールブロンドを翻し。
ダリアは廊下に走り出た。
すると…
ゴゴゴ…と重い音が鳴って、鉄格子が上がり、床の穴が閉じていく。
そして、何事もなかったかのように元通りになった細長い部屋の、一番奥にあるロッカーが開いた。
出てきたのは、なんと携帯を手にした団長。
「伯爵の読み通り、男だけがソチラに向かいました。
わかってます。
後のコトはお任せください。」
…
ダレと話してンのか、知らないケドさー…
真面目くさった顔してっケドさー…
やっぱアンタ、フリキレた人だよ。