花の名は、ダリア

「小さい言うな。
175㎝はあるわ。
現代日本男子の平均身長は超えとるわ。」


鼻に皺を寄せたソージが、牙を剥き出して獰猛に唸る。


「おまえ、あン時ドッカで覗き見してたの?
イイ趣味してンじゃねェか。」


するとマダムキラーは、芝居がかった動きで両手を上げて掌を見せ…


「気に障った?
ゴメン、ゴメン。」


下がった目尻をさらに下げて、困ったように謝った。

ナニ?コイツ。

言っていいカナ。
言っちゃおっカナ。

軟弱!軟弱ゥ!!

あ、『貧弱』が正解だっけか。

だが、ただの軟弱男じゃないのが、コイツの厄介なトコロ。


「初めまして、ソージくん。
僕は爵位を捨てた男装の麗人じゃなく、ジェルマン伯爵だ。
同種同士、仲良くしようよ。」


ヤローにしては少し長めの、ウェーブがかかったゴールデンブロンドを掻き上げて、男はたおやかに微笑んだ。

そう、彼はヴァンパイア。

ソージよりも長い時を生き、人の心を惑わせて掌握するすべを身につけた、老獪な『貴族』。

こう言うと、錬金術を究めて不老不死を手に入れ、今の姿は荒○飛呂彦大先生なんじゃないかなんて噂まである、伝説のある人物を思い浮かべる人も多いだろう。

だが、ソレは間違い。

この物語はフィクションだから。

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