花の名は、ダリア
ジワリと本性を現しはじめたサムが、猫足テーブルに置いてあった小型の四角いモノを手に取った。
「その檻はね、水族館なんかで使われている厚さ60㎝のアクリルパネルで出来ているンだ。
僕も入ってみたケド、ソレを破るには相当時間がかかるよ。
そして君の頭上にあるのは、UVランプ。」
サムの言葉に促されてソージが視線を上げると、長い蛍光灯らしきモノが、檻の真上の天井一面に隙間なく並んでいる。
「つまり君は紫外線照射装置…
わかりやすく言うと、日焼けマシンの中にいるンだよ。
そしてコレが、そのリモートスイッチ。
…
どういう意味か、わかるよね?」
ハイ、把握。
要するに、だ。
『君の命を握ってマスヨー』と。
『主導権も握ってマスヨー』と。
そーゆーコトね。
「そこまでスタンバっといて、なんですぐに殺さねェの?
命乞いする姿でも見てェの?
おまえ、メンドクサイね。」
目を細めてスイッチを振ってみせるサムに、ソージは不遜な態度を崩さず悪態を吐いた。
けれど、もうサムは不機嫌にはならない。
絶対的な優位を確信して、微笑み続ける。
「ヤだな、勘違いしないでよ。
僕は君を殺したいワケじゃない。
君に、お願いを聞いてほしいだけなンだ。」