花の名は、ダリア
さっきまですぐソコに立っていたソージが、檻の真ん中で転がっている。
サムの長話を聞いていた時のような涅槃スタイルではなく、うつ伏せでダラリと転がっている。
死体か。
「え?え?ソージ?
どうしたの???」
ダリアは再びガラスに手をついて、ソージに呼びかけた。
けれど返ってきたのは、顔まで伏せているせいで、聞き取りにくいくぐもった声…
地の底から響くような、死体の声。
「どーしたもこーしたもねェわぁぁ…
無理無理、ナニもかも無理だわぁぁ…」
ナニコレ!?
ナンデコーナッタ!?
両頬に手を当てて、ダリアが凍りつく。
その後ろのサムまで、心なしか青ざめている。
「急に、どうしちゃったの?
どうして無理だなんて言うの?」
「どーしてってぇぇ…
ソイツ、恋人だったンだろぉぉ…
俺は下僕で奴隷で飼い犬なのにぃぃ…
なーんーでーだーよぉぉぉ…」
「え?だって…
ソージはサムみたいに、私の恋人になりたい、なんて言わなかったじゃない?」
「ンだよ、ソレぇぇ…
言ったら貴方の男になれンのかよぉぉ…」