花の名は、ダリア
「僕が中止の連絡を入れなければ、ミニライブ中のステージに『穢れし者』は投入される。
もうそろそろ、声優が壇上に上がる時間だねェ。」
震えるダリアに視線を向けて、サムは微笑んだ。
「なんてことを…」
「あの場にいる人間たちの運命は、君の手に握られているンだよ?『ノエル』。
生かすも殺すも、君の決断次第だ。」
「そんな…
私の… 私…が‥‥‥」
サムの笑みは深くなる。
ダリアの震えは収まっていく。
あどけなさが消え。
ぺールブルーの瞳に諦めが宿り…
「僕の話を聞いてほしい。
そして、僕の頼みを聞いてほしい。
そうすれば、多くの命は救われる。
『ノエル』、君だって救われ」
「ダリア。
聞く必要はありません。」
ダリアがいつもの悲しい表情になる前に、ソージはサムの優しい脅迫を遮った。
そして、チン、と澄んだ音を立てて刀を鞘に納め…
「『穢れし者』が腹を満たす前に、斬ってしまえばいいンです。
頼りになる貴方の恋人なら、そんなの朝飯前ですよ。」
唇の端を自信アリげに持ち上げ、ダリアに向かってパチンと片目を閉じてみせた。