花の名は、ダリア
すると、ダリアの表情が瞬く間に輝く。
頬に愛らしいエクボが浮かぶ。
「そうよね!
ソージの言う通りだわ!」
満面の笑みでそう言ったダリアは、部屋の隅から猛ダッシュで駆け寄り、ソージの背中に抱きついた。
なんという全幅の信頼。
なんという素直で可愛い恋人。
ソージの脳内で、色とりどりの花が咲き乱れて蝶が舞う。
その花畑の中央には、一際大きく、一際美しく、誘うように揺れる真紅の花が…
あぁ…
コレが人生の春か…
「バっカじゃないの!?
人間の前で『穢れし者』を殺す気か!?
人間に正体を明かす気なのか!?
大騒ぎになるゾ!!」
目を閉じ、拳を胸に当てて幸せを噛みしめるソージを、春から取り残されて納得できないサムが罵倒した。
なんて無粋な生首だ。
「大騒ぎ?
大盛り上がりの間違いじゃねェの?
コスプレイベントなだけに?」
ソージは冷ややかにサムを見下ろし、面倒臭そうに吐き捨てた。
けれど言葉とは裏腹に、ダリアを背中にくっつけたまま身を屈め、丁重に生首を拾い上げる。
それから、懐から取り出したモノを口に咥えてキュポっと蓋を開け、胸に抱えた生首に…