花の名は、ダリア

「貴方は大切なコトをお忘れですよ。」


穴を登りきって元の階に戻ったにも関わらず、ソージはダリアを放すことなく強く抱きしめた。

ちょ、ソージ…なんて言ってもがく身体を、片腕で押さえ込んで。


「俺がヴァンパイアになったのは、ずっと貴方の傍にいるためです。」


逃げようとするうなじを引き寄せ、仰け反った白い首筋を甘噛みして…


「なのに貴方を手放すなんて、あり得ない。
俺が今の俺でいる意味がない。
ダリア…
貴方は永遠に俺だけの…」


「わ…わかった!わかったわ!
だから待って?
ソージも大切なコトを忘れてるンじゃない?」


羽織留めを外そうとする大きな手をギュっと握って、ダリアはソージの暴走を止めた。

膨れ上がった欲望に水を差されたソージが、唇を尖らせる。


「…
あれだけ煽っておきながら…
『今すぐココで貴方を抱く』以上に大切なコトなんて、ドコに存在しますか。」


「『穢れし者』よ。」




そーだった。
あったネ、そんな話。

あああぁぁぁ!もぉぉうぅぅ!
クソがぁぁぁぁぁ!!!

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