花の名は、ダリア
「外でメシ食った後、いつも真っ直ぐ帰ンの?」
俺は、俯いてしまったヤバくてカワイイMARUTA男の爪先を、自分の爪先でつっついた。
すると、MARUTA男は視線だけを上げ、上目遣いで俺を見る。
「…
や、いつも大体、高いトコに登る。」
「高いトコ?
ナンデ?」
「ダリアがさ、街の明かり眺めンのが好きなンだよ。
明かりの下に誰かがいると思うと、ソレが人の命の灯火に見えンだと。」
「へー…
ギ… や、カノジョさん、感性も独特っつーか、なんかキレイだよな。
じゃ、もうソレでイイと思うよ?」
俺がそう言うと、MARUTA男は『そんなんいつも通りじゃねェかー』とかなんとかボヤきながら、椅子の上で仰け反って身体を左右に揺らす。
犯罪まがいに手が早いクセに。
女勇者が湧くイケメンのクセに。
黒のデニムとグレーのVネックTシャツの上に、袖を折ったテーラードジャケットなんて大人カジュアルを着こなしちゃうクセに。
駄々をこねるコドモじゃねーか。
「『いつも通り』が、いいンじゃねーの?」
サラサラ揺れるポニーテールを眺めながら、俺は苦笑した。