花の名は、ダリア
そんな『ノエル』は今、魔物に捕らえられている。
コスプレイベントに姿を現した『ノエル』と共にいた、長い黒髪の男。
アレが魔物だ。
魔物は伯爵の説得を嘲笑い。
イベントをブチ壊し。
再び『ノエル』を連れ去った。
悪逆非道とは、まさにこのコト。
あの、いかにも無害そうな可憐な容姿に騙されてはならない。
いち早く到着を確認し、魔物を迎え撃ち、『ノエル』を奪還しなければ。
これは言わば聖戦…ジハードなのだ。
女は木の根や石にハンドルを取られながらも、毅然とした眼差しで前方を見つめ…
…
あら?
前方に、ダレかいるよ?
道の真ん中に突っ立って、コッチにヒラヒラ手を振ってるよ?
透き通った、淡い青の瞳。
薄い金のツインテ。
白いミニワンピ。
『ノエルちゃん』???
いや、違う。
だってアニメ絵でも、デフォルメされてもねぇもん。
人として等身大だもん。
「『ノエル』!?」
女は急ブレーキをかけ、原付を止めた。
来てンじゃん。
船は見つからなかったケド、もう来てたンじゃん!