花の名は、ダリア
ココは山の奥深く。
薄暗いが、生い茂った木々の隙間から木漏れ日が差しているので、気を失ってからそれほど時間は経っていない。
首筋から頭にかけて鈍い痛みが走るのは、打撃を食らった証。
そして目の前には、『起きた、起きた』と騒いでいる男と女。
てか、魔物と『ノエル』。
つまり…
誘い出され、殴られ、拉致されたってワケですネ。
ワカリマス。
だが、拘束されてはいない。
首筋以外に危害を加えられた様子もない。
その上この誘拐犯たちときたら、ノンキに豚汁作って食べてやがりマスYO!
キャンプか。
なんのために拉致りやがった?
聖戦はドコ行った?
上半身だけを起こして、警戒も露に黙りこむ女に…
「…あぁ、コレか。
ほら。
悪かったな、電波団長。」
なんて言って、魔物が『ノエル』から受け取ったメガネを手渡す。
「電波団長も豚汁どうぞ。」
なんて言って、『ノエル』が使い捨ての紙椀を手渡す。
まじでキャンプか。
言いたいコトは山ほどあるが、まず女は、最重要事項を声を大にして叫んだ。