花の名は、ダリア

この人、本気か。
いや、いつだって本気なのは知ってるが。

『ノエルちゃん』が一言言えばアッサリ聞き入れてもらえると、本気で思ってたンか。

コドモ脳、単純すぎる。

どうして笑うの?笑わないでっ
なんて、ダリアがソージの胸を拳でポカポカ叩く。

いや、だって…可愛くて…
なんて、ソージが笑いを堪えながらダリアの頭をヨシヨシと撫でる。

ナニコレ?
イチャついてンの?


「目を覚ますべきなのは、『ノエル』のほうではありませんか?」


眉を寄せて二人を眺めていたカオリが、棘のある声で言った。


「『ノエル』は今、ストックホルム症候群に陥っておいでのようです。」


「「ストック…ナンテ?」」


「誘拐や監禁の加害者に対して、被害者が好意を寄せていると錯覚してしまう心理現象です。
その男はあなた様を捕らえる魔物なのですよ!?
仲良く豚汁を食べるなど、言語道断です!」


力強く言い切った後、カオリは口の中に里芋を放り込んだ。


「や、オメェも食ってるしね?」


呆れたように呟いたソージも、同じく口に里芋を放り込んだ。

的確なツッコミをしたソージを、カオリがキっと睨みつける。

ソージはカオリから目を逸らし、ヒョイと肩を竦める。

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