花の名は、ダリア

「確かに俺は人斬りだ。
だが、なんでおまえがソレを知ってンの?」


「見たからよ!
あのイベントの日、おまえはステージに出た私たちの仲間を殺したじゃないの!」


カオリの眼差しは憎悪に満ちている。

それを平然と受け流したソージは、素早くダリアと視線を交わした。

あの日、ステージ上にいた、ソージが斬ったモノは…


「アレが仲間?
アレをアソコに放ったのは、おまえなのか?」


「『アレ』なんて言うな!
彼は、一度人であることを捨てて煩悩と闘っていた、修験者だったのよ!
あの日あの場で人として再生し、居並ぶ人々に奇跡を示すはずだったのに!
そのために、暴れる彼を眠らせて、合宿所から連れて出たのに!」


それをおまえが殺した、と、カオリは人差し指をソージに突きつける。

笑っちゃうね。


「おまえ、ほんとバカだな。
電波でバカとか、哀れだわー」


「っ!?
なん…だ…と…」


俯いて肩を揺らすソージを見て、カオリは反論しようとしたが…
やっぱりやめて、口を噤んだ。

ソージが顔を上げたから。

彼の瞳が、あまりに澄んでいたから。

< 418 / 501 >

この作品をシェア

pagetop