花の名は、ダリア
「確かに俺は人斬りだ。
だが、なんでおまえがソレを知ってンの?」
「見たからよ!
あのイベントの日、おまえはステージに出た私たちの仲間を殺したじゃないの!」
カオリの眼差しは憎悪に満ちている。
それを平然と受け流したソージは、素早くダリアと視線を交わした。
あの日、ステージ上にいた、ソージが斬ったモノは…
「アレが仲間?
アレをアソコに放ったのは、おまえなのか?」
「『アレ』なんて言うな!
彼は、一度人であることを捨てて煩悩と闘っていた、修験者だったのよ!
あの日あの場で人として再生し、居並ぶ人々に奇跡を示すはずだったのに!
そのために、暴れる彼を眠らせて、合宿所から連れて出たのに!」
それをおまえが殺した、と、カオリは人差し指をソージに突きつける。
笑っちゃうね。
「おまえ、ほんとバカだな。
電波でバカとか、哀れだわー」
「っ!?
なん…だ…と…」
俯いて肩を揺らすソージを見て、カオリは反論しようとしたが…
やっぱりやめて、口を噤んだ。
ソージが顔を上げたから。
彼の瞳が、あまりに澄んでいたから。