花の名は、ダリア

ソージは地面に這いつくばったまま動けずにいた。

咳と血を吐き出し続けながら。

なんて無様なンだろう。

世話になった恩も返せない。
手助けすらできない。

なんて無力なンだろう。

『最強伝説!』とか思ってた昔の自分、死ね。

むしろ爆ぜろ。

もう何も出来ない。
出来るコトなんてない。

ただ、死んでゆくだけ……


「ソージ?」


澄んだ声が掛けられた。

振り仰げば、青白い月を背にした美しい人。

蹲ったまま我が身を呪っている間に、とっくに夜は更けたようだ。


「どうしたの?

ソージのとは違う、血の匂いがするわ。」


細い指で髪を耳にかけて、小首を傾げたダリアが言った。

この人はまた、おかしなコトを…

血の匂いって、個々でそんなに違うモンなの?
違ったとして、判別できるモンなの?

だが、今回は大正解。


「コレです。」


ソージは左手に握りしめたままだった小さな草履を掲げ、軽く振った。

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