花の名は、ダリア

「ねェ、タナカ…」


今日も無駄足でしたよ、カオリさんは?あれ?バイクはどうしたンです?などなど、その他諸々のどーでもイイ話を聞き流したカオリは…


「アンタ、修験者たちがいる地下の修行場を見たコトある?」


声を落としてタナカに訊ねた。

するとタナカは大きく目を見開き、けれどすぐに目を逸らし、ぎこちない動きでバイクのエンジンを切る。


「俺は…
ありません…」


逡巡の後にタナカの口から出たのは、その身体には似合わないか細い声だった。

絡まない視線を捉えようと、俯くタナカの顔をカオリが覗き込む。

目を逸らす。
覗き込む。

さらに目を逸らす。
さらに覗き込む。

地味な攻防に勝利したのは、真理を求める科学者の表情をしたカオリだった。


「『俺は』ってコトは、見たコトある人が他にいるのね?」


「いや、その… 禁止されて」


「チクったりしないわよ。
てか私、中の様子が知りたいの。」


「ダメですよ。
修行場に入れられちゃいますよ?」


ナンダソリャ。

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