花の名は、ダリア
「知り合いのバーサンの孫が、コレを残して行方不明になったンですって。」
「行方不明?」
「ええ。
なのに俺…
なーんにも出来ないンですよ。
ほんとバーサンにはよくしてもらったのに。
こんな身体になっちまって、もうすぐ死ぬから、なーんにも出来ないンですよ。
ハハ、笑っちゃいますよね。」
ソージが笑う。
植物ならば瞬く間に枯れてしまいそうなほど、渇ききった声で。
呼応するように咳も出るが、それでも笑い続ける。
そして不意にわかりやすい作り笑いをやめ、真顔になってダリアを見据えた。
「ダリア、前に言ってましたよね?
『私は死なない』って。
あんなの、冗談だってわかってますケド。
あり得ないって知ってますケド。」
「…」
「今、切実に、死にたくないです。」
「ソージ…」
「俺、永遠の命が欲しいです。」
囁くようにそう言ったソージは、悲しそうだった。
口元から胸元まで血塗れで、ゾンビ以外のナニモノでもなかったが、その黒い瞳には悲哀が溢れていた。