花の名は、ダリア
追いかけてくる狂おしい呻きから逃がれようと、カオリとタナカは耳を塞いで階段を駆け上がった。
競争するように駆けて、駆けて、駆けて…
鍵を盗んだ執務室に飛び込み、後ろ手にドアを閉める。
「アレは…
アレはなんだったンですか!?」
まだ息の整わないカオリに、タナカが興奮ぎみに問いかけた。
さすが体育会系。
これくらいの全力疾走はへっちゃらってか?
「アレが、修行で自分を高めてる修験者?
ただのバケモノじゃないですか!?」
「…そうね。」
「それに…あの腕…
ひょっとしてアレ、人間食ってンじゃないですか!?」
「…そうね。」
「数、見ました?
10体くらいでしたよ?
アレが地下に入ったヤツらの一部だとしたら、他のみんなはドコ行ったンです!?」
「…」
「ねぇ!!答えてくださいよ!!
アレに食われちまったンじゃないンですか!?」
「ちょっと落ち着きましょう。」
どんどん声のトーンを上げていくタナカを、カオリは努めて穏やかに宥めた。