花の名は、ダリア

アレがいったいなんなのか。

消えた仲間がどうなったのか。

自分たちがナニを信じ、ダレに着いて、ドコに向かおうとしていたのか。

カオリは全て知っている。

今度は聞いただけではなく、自らの目で確かめたのだから間違いはない。

だが、果たしてソレを明かすべきだろうか?

今のタナカでも充分パニックを起こしているのに、
『伝説の怪物が実在していて、人間を下僕にしようと暗躍しているよ☆』
なんてまるっとバラした日にゃ…

『使徒の国』の者どころか、全人類が恐慌に陥る。

魔女狩りや異端審問のような暗黒の歴史が、再び繰り返される可能性も否定できない。

なんせ『中二、乙』などと笑い飛ばせない物的証拠が、地下でウガウガ暴れておられましたからネ!?


「ノンキに憶測を語ってる場合じゃないでしょう?
アレは危険で、アレを飼ってる伯爵はもっと危険。
だから、ココにいるのはとても危険。
それで充分でしょう?」


真実は自分の心の中だけに留めておこうと決意したカオリは、震えるタナカの手を取って優しく言い含めた。


「でも…」


「今、私たちに出来るのは、一刻も早く危険から身を遠ざけるコトだわ。
そうでしょう?」


「でも…
みんなが…」

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