花の名は、ダリア

「もちろん、みんな一緒よ。
もう今日のフェリーには間に合わないから、明日の朝の便で島を出ましょう。
そして、『使徒の国』をみんなで脱退しましょう。」


「でも…
みんな信じてくれるか…」


「ライトを点けた時に動画も回しておいたから、みんなに見せればイイわ。
ブレブレだと思うケド、異常事態が起こっているのは理解してもらえるでしょう?」


「え?
アレ、撮ってたンですか?
余裕ですね。」


「なんでも記録したがるのは、余裕じゃなくて習性よ。
職業病とも言うわね。」


カオリがおどけて肩を竦めると、やっとタナカの震えが止まり、頬に赤みが差す。

メダパニが解除されたか。

これでとりあえず、静かなる撤退の算段がついた。

後は、地下のアレと伯爵をどうするかだケド…

あの、愉快な豚汁誘拐犯に相談できないカナ?

次の思案に耽りながらも、カオリはタナカを安心させるように微笑んで、チャリチャリと盗んだ鍵を振る。


「コレ、元に戻さなきゃ。
タナカも普段通りに振る舞ってよね?
地下を見ちゃった挙げ句、逃げようとしてるコトが伯爵に知れたら」


「知れたら…
どうなるだろうね?」

< 438 / 501 >

この作品をシェア

pagetop