花の名は、ダリア

だが、なぜだろう。

ソージを見つめる二つのぺールブルーの宝玉まで、悲哀に彩られたのは。

いや、悲哀よりももっと深い、絶望に彩られたのは…

瞳に宿った悲しみを隠すようにニコリと笑ったダリアは、ソージの手からヒョイと草履を奪った。

そして、クンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。


「コレ、一人分の血じゃないわよ。
新しい血と、乾ききってなかった古い血が数人分ってトコかな?」


「…は?」


ソージはポカンと口を開けてダリアを見上げた。

まーた妙なコト言ってるよ。

新しい血?
古い血?

ナニソレ?

自己嫌悪でイッパイの頭を整理整頓すりゃ、ちったぁ理解できマスカ。

だがダリアの次の行動と言葉は、完全にソージの理解を越えた。

彼女は舌をペロリと出して。
草履の鼻緒についたシミを舐めて。
ムニュムニュと口を動かして…


「靴擦れしてる。
コレが、そのお孫さんの血ね。」


ペロペロ


「走ってる、走ってる…
あ、転んだ。
爪先んトコについてるのは、転んで膝から出た血だわ。」

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