花の名は、ダリア

(考えろ。
私はバカじゃない。
考えろ。)


カオリは目を閉じ、深く息を吐き出した。

バケモノになるために大人しく待つなんて、冗談じゃない。

逃げてやるよ。

タナカどころか、この島にいる仲間全員を連れて逃げ切ってやるよ。

考えろ。
起死回生の策を。

考えろ。
いや… 知っている?

確か、ダリア先生のヴァンパイア講座で…


(『貴族』はお肌がデリケートだ!)


カっと目を見開いたカオリは、窓に向かって突進した。

驚いた顔をする怪物の隣を猛ダッシュですり抜け、カーテンに飛びつき、引きちぎる勢いで大きく開け放つ。

途端に部屋に満ちる、夕暮れの強い陽射し。


「っ!?」


声にならない悲鳴を上げてタナカを放り出した怪物は、陽の当たらないドアの傍に飛び退いた。

名実共に、立ち位置逆転。


「生きてンでしょ!?
早く立って!」


煙が噴出する顔面を手で覆う怪物を睨みつけたまま、カオリは蹲って咳込むタナカを急かした。

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