花の名は、ダリア
「僕の唯一の弱みを知ってるってコトは…
二人に会ったンだね?」
怪物が手を下ろし、右半分が焼け爛れた痛々しい顔で不気味に笑った。
もう柔和だなんて思えない。
剥き出しになった牙に、全身が怖気立つ。
だが、ビビッてばかりもいられない。
「会いました。」
カオリは自らを奮い立たせ、毅然と胸を張って答えた。
「そう。
あの性格の悪い男は、どんな甘い言葉でカオリくんを味方につけたの?」
「ソージって男のコトを仰ってるなら、甘い言葉なんてとんでもないですよ。
終始、電波だバカだって、罵られてましたから。」
「…
あー… うん。
アイツ、そーゆーヤツだよね…」
眉尻を下げた怪物が、困ったように苦笑する。
この表情をカワイイなんて思ってた、昔の自分をブン殴ってやりたい。
「だから私は、誰の味方でもありません。
サヨウナラ、伯爵。
これは私自身の目で真実を見て、私自身が出した結論であり、私自身の意志です。」
カオリは冷たい声でそう言い切り、一度は盲目的に信じた『永遠の幸福』の象徴にクルリと背を向けた。