花の名は、ダリア
Ⅴ
「タナカ、ココで停めて。」
「なんで?
早く山を下らないと」
「いいから停めて。」
ガっタガタの坂の途中で、カオリはタナカにバイクを停車させた。
…
あれれ?
横倒しのまま放置しちゃった、自分の原付が消えている。
確かこの辺りだったハズなのに。
タナカの原付を降りてキョロキョロ。
伸び上がってキョロキョロ。
参ったな。
バイクを乗り捨てた場所を起点に、愉快な誘拐犯たちを捜そうと思ってたのに。
思惑が外れて、焦るカオリの耳に…
ブォンブォンブフォォォン♪
坂の下のほうから、調子こいてる系の、エンジンを吹かす音が聞こえてきた。
こんなトコロにまさかの珍走?
いや、違う。
鼻唄を歌いながら、バイクで坂を登ってきたのは…
ダリアだ。
血で汚れたワンピースは脱いだようで、白い男物のYシャツ姿だが。
ツインテはほどいたようで、輝く金髪を無造作に靡かせているが。
間違いない。
実に楽しそうにバイクに揺られているのは、ダリアだ。