花の名は、ダリア
最後の、短い悲鳴はなんですか?
ハイ、タナカくんですよ。
会話を邪魔されたカオリが不機嫌そうにタナカを見ると、彼は木々の間の一点を凝視して真っ青になっていた。
不吉な予感に導かれるように、カオリはタナカの視線の先に目を向ける。
あぁ、いる。
人間離れした肌の色。
人間離れした濁った瞳。
人間離れした呻き声。
地下で見たバケモノが、グラグラと不自然に身体を揺らしながら佇んでいた。
「そんな…
もう手遅れ…」
カオリが絶望的に呟くと…
「手遅れじゃねェ。
1㍉たりとも動くなよ。」
いつも通り涼しげだが、ゾクリとするような威圧感を漂わせた声でソージが言った。
安心して。
バケモノよりもアンタの声に、足が竦んで動けないなう。
「アレを見ちまって、追われてるってワケか?」
ソージの問い掛けに、カオリとタナカが瞼だけでパチパチ頷く。
「なるほどな。
今は満腹みてェだが、動きを見せれば必ず襲いかかってくる。
だからそのまま話を聞け。」
カオリとタナカは、再び瞼で頷くが…