花の名は、ダリア
だってサムってば、アチコチで生み出した『穢れし者』を平気で放置しちゃうヤツだよ?
ヤリっぱで、責任も取らずに逃げちゃうクソだよ?
今更、口封じなんて考えもしねェだろ。
じゃあ、いったいなんの目的で『穢れし者』たちは放たれた?
ヘンゼルとグレーテルが落としたパン屑のように、目印チックに配置された『穢れし者』たちは…
(誘導、か。)
その可能性に行き着いたソージは…
それでも足を止めずに走り続けた。
って、あれ?
イイの?
誘導されてるってコトは、罠なりなんなりが待ち受けてるってコトだよ?
ハイ、構いませんとも。
『ヒャッハー☆斬り込み隊』の隊長に、敵の策を看破した上、さらに出し抜く脳ミソなんてあるワケがない。
猪突猛進。
勇往邁進。
罠すら斬り捨てて、突き進むのみ。
本能のままに獲物を屠る獣の小鼻が、ヒクヒクと蠢く。
臭う。
夜の香り。
山の香り。
血の香り。
その中に微かに混じる、ベルガモットの香り…
見る者をゾっとさせる壮絶な笑みを浮かべたソージは、地を蹴って高く跳び上がった。