花の名は、ダリア
「こ…ここここの、真正サディストが!!」
なんとか気力を振り絞って叫んだサムは、突きつけられていた切っ先をサーベルで弾いて飛び退った。
後方に一回転して体勢を立て直そうとするものの、すぐ目の前に迫る白刃。
必死で斬り結んでみるものの、軽くあしらわれ、またも目の前に迫る白刃。
『剣の腕には覚えがある』なんて言った自分が恥ずかしい。
動きが違う。
疾さが違う。
鋭さが違う。
この男は格が違う。
どんな体勢からでも正確に狙いを定めて繰り出される、破天荒な斬撃。
かと言ってそれは未熟さ故の奇を衒った攻撃ではなく、踏んだ場数に磨き上げられた妙技なのだ。
これが、数多の白兵戦を己の肉体と一本の刀のみで生き抜いた、本物の剣士。
いや、彼自身が、血に飢えた凶刃そのもの。
だって、完全にイってるクセにやけに澄みきった瞳の輝きは、極限まで研ぎ澄まされた刃のソレと全く同じではないか。
一合打ち合うごとに、最悪のビジョンがサムの脳を占めていく。
このままでは斬り刻まれる。
血塗れの無残な姿で日に曝される。
そして焼け死ぬ。
ソージの言葉通りに。
恐怖に支配されたサムは、迷わず逃げの一手に転じた。