花の名は、ダリア


どれくらい時間が経ったのか…

『穢れし者』の饐えた血の匂いも、ソージの気配も、全く感じられない山を一回りしたダリアは、合宿所の前に辿り着いていた。

頼まれたおつかいは、ちゃんとこなしましたよ?もちろん。

網を仕掛けて戻ってきた漁師サンを、貧血でノックアウトして。

漁港で一番新しくて、一番大きな船を拝借して。

ワクワクしながら。
でも寄り道はせずに操縦して。

ブレーキのタイミングが難しくて、桟橋に突っ込んだりしちゃったものの、なんとか船の受け渡しに成功して。

電波団長と電波団のみんなにお礼を言われて。

サヨナラ、と手を振って…

そう言えば、テープ投げをしてないナ。
それだけが心残りだナ。

とはいえ任務は完遂したのだから、きっと褒めてもらえるハズ。

後はソージと合流するだけ…


(ソージが迎えに来てくれるまで、ココで待っていようカナ。)


悪戯そうにペールブルーの瞳を輝かせながら、門を開けて中を覗く。

ちょっとした探検気分。

ダリアはスキップでもしそうな弾んだ足取りで、合宿所に侵入した。

玄関、そして食堂。

階段を上がれば、ベッドが置かれた個室。
ココはプライベートスペースだから、覗いちゃダメダメ。

また階段を下りて…

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