花の名は、ダリア
Ⅶ
どれくらい時間が経ったのか…
『穢れし者』の饐えた血の匂いも、ソージの気配も、全く感じられない山を一回りしたダリアは、合宿所の前に辿り着いていた。
頼まれたおつかいは、ちゃんとこなしましたよ?もちろん。
網を仕掛けて戻ってきた漁師サンを、貧血でノックアウトして。
漁港で一番新しくて、一番大きな船を拝借して。
ワクワクしながら。
でも寄り道はせずに操縦して。
ブレーキのタイミングが難しくて、桟橋に突っ込んだりしちゃったものの、なんとか船の受け渡しに成功して。
電波団長と電波団のみんなにお礼を言われて。
サヨナラ、と手を振って…
そう言えば、テープ投げをしてないナ。
それだけが心残りだナ。
とはいえ任務は完遂したのだから、きっと褒めてもらえるハズ。
後はソージと合流するだけ…
(ソージが迎えに来てくれるまで、ココで待っていようカナ。)
悪戯そうにペールブルーの瞳を輝かせながら、門を開けて中を覗く。
ちょっとした探検気分。
ダリアはスキップでもしそうな弾んだ足取りで、合宿所に侵入した。
玄関、そして食堂。
階段を上がれば、ベッドが置かれた個室。
ココはプライベートスペースだから、覗いちゃダメダメ。
また階段を下りて…