花の名は、ダリア
けれどそんなコトはおくびにも出さずに。
微笑みながら身を起こしたサムは、自分の隣をトントンと掌で叩いて、ダリアにも座るよう促す。
「どうぞ。
心配してくれるなんて、嬉しいな。」
「んー…
そうでもないわ。」
あら、つれない返事。
それでもダリアは、サムに誘われるまま彼の隣に腰を下ろした。
もう月は落ちてしまったのか、窓の外に広がる海に光はなく、不吉なナニカを孕んでいるかのように黒くうねっている。
「なら、僕に会いに来たワケじゃないンだね。
ココでナニをしているの?」
美しくも儚い端正な横顔に視線を奪われながら、サムはダリアに訊ねた。
「ソージが来てくれるのを、待っているの。」
「…
…
…
来なかったら?」
「あら、絶対に来るわ。
ソージはスゴいのよ?
前に、どうしても、とろけるチーズが乗ったハ○ジのパンが食べたくなって、ソージが寝てる間にアマゾンの奥地からアルプスに向かったコトがあったンだケド、ちゃんと私を見つけて迎えに来てくれたのよ?」
「あー… そう…
彼、結構苦労してたンだね…」