花の名は、ダリア
他にもね?あの時はね?と、瞳をキラキラさせて楽しげに話すダリアを見つめながら、サムは思う。
ソージが彼女を迎えに来ることは二度とない。
どこにいてもダリアの存在を捜し出せたソージの存在が、もうどこにもないのだから。
「…
ねェ、『ノエル』。
彼のコトは忘れて、僕と一緒に来ない?」
暗い海に視線を移し、サムは低く囁いた。
すると今度は、ダリアがサムの横顔をまじまじと見つめ、心底意外そうな声を上げる。
「ナニソレ?
イヤよ。」
即答デスカ。
ソーデスカ。
明確すぎる拒否に、サムが目尻を下げて苦笑する。
「僕は随分嫌われてるみたいだね。
でも、彼だって、そんなにイイヤツとは思えないケドな。」
「どうして?」
「だって君のコトを、花だって言ってたよ?」
「知ってるわ。」
「『物言う花』って、美しい人を称える言葉であると同時に、女性をバカにした言葉だと僕は思うンだ。
彼は君という人格を蔑ろにして、モノ扱いしているンじゃないのかな?」