花の名は、ダリア

他にもね?あの時はね?と、瞳をキラキラさせて楽しげに話すダリアを見つめながら、サムは思う。

ソージが彼女を迎えに来ることは二度とない。

どこにいてもダリアの存在を捜し出せたソージの存在が、もうどこにもないのだから。


「…
ねェ、『ノエル』。
彼のコトは忘れて、僕と一緒に来ない?」


暗い海に視線を移し、サムは低く囁いた。

すると今度は、ダリアがサムの横顔をまじまじと見つめ、心底意外そうな声を上げる。


「ナニソレ?
イヤよ。」


即答デスカ。
ソーデスカ。

明確すぎる拒否に、サムが目尻を下げて苦笑する。


「僕は随分嫌われてるみたいだね。
でも、彼だって、そんなにイイヤツとは思えないケドな。」


「どうして?」


「だって君のコトを、花だって言ってたよ?」


「知ってるわ。」


「『物言う花』って、美しい人を称える言葉であると同時に、女性をバカにした言葉だと僕は思うンだ。
彼は君という人格を蔑ろにして、モノ扱いしているンじゃないのかな?」

< 467 / 501 >

この作品をシェア

pagetop