花の名は、ダリア

ダリアは何も言わず、頷くこともなく、ただ静かにサムの打ち明け話を聞いていた。

『仕えし者』の国を作るのは、世界征服などではなく、全て彼女のためだというコトを。

多くの犠牲者を出したサムの試みも、全て彼女のためだというコトを。

そして実は、『使徒の国』は世界中に用意してあり、多くの人間が『ノエル』を待っているというコトを…


「言わずにいて、ゴメン。
でも、わかってくれたよね?
君が僕を選んでくれれば、君は同族に囲まれ、ずっと幸せでいられるンだよ?」


ダリアの反応を伺うように、サムはぺールブロンドに指を絡めて彼女の瞳の奥を覗き込んだ。

果たして、果たして…


(そんなの、本当に幸せかしら?)


サムの視線から逃れるように、ダリアは長い睫毛を伏せた。

電波団長は逃げ出したのだ。

短い夏を炎のように咲いて散る、大輪の花の如き自由で美しい生を選んだのだ。

永遠の生が、永遠に解けることのない呪いだと知れば、誰だってそうするだろう。

一時は夢に溺れても、いずれは後悔し、限りある命に焦がれるようになるであろう同族たちと傷を舐め合って生き続けることが、幸せだとは思えない。

散らない花を美しいと愛でてくれるのは、ただ一人でいい。

そしてその一人は、既に傍にいる。

< 469 / 501 >

この作品をシェア

pagetop