花の名は、ダリア
「ダリア…
貴方はいったいなんなんです?」
茫然自失でソージは訊ねた。
答える声はない。
しかも、逆に問い掛けられる。
「ね、おっきい鐘が落っこちてたり、壊れた石像なんかがあるトコロって、ドコ?
あまり遠くない場所よ。」
「はぁ…
それなら…
川向こうの森の中に、廃寺があるらしいですよ…」
やっぱり茫然自失でソージは答えた。
ソージの虚ろな瞳をしばらく見つめていたダリアが、緩んでしまった彼の手をほどいて立ち上がる。
そして縁側に歩み寄り、転がっていたソージの刀を手にした。
「コレ、よく斬れる?」
「はぁ…
一応、業物らしいですケド…」
「そう。
じゃあ、ちょうだい?」
「はぁ…
は?」
「私がオバーサンのお孫さんを助けてあげる。
ついでだし。
私、ソージにお礼しなくちゃいけないしね。」
カランと乾いた音を立て、鞘が落ちる。
ダリアの手によって抜かれた刃が、月の光を受けて青白く輝くのを、ソージは見た。