花の名は、ダリア
「私はもう孤独じゃない…」
目を閉じたまま薄く唇を綻ばせ、ダリアは呟いた。
けれどその声は、彼女の姿同様儚く消え入るようで、サムの耳には届かない。
「ねェ、全ては君のためなンだよ?
僕と来てくれるだろう?
驚きで言葉も出ない?」
「んーん、驚いてないわ。
『全部私のため』なのは知らなかったケド、『全部私のせい』なのはわかっていたもの。」
首を左右に振ったダリアは、今度はハッキリと声に出してサムに答えた。
そして、怪訝な顔をするサムの手に手を重ね、そっと握りしめて…
「ごめんね、サム。
やっぱりその命は返してもらうわ。
このままココで、一緒に朝の陽射しを浴びましょう。
でも、一人にはしないから。
アナタの罪は、私の罪。
いつかこの身体が朽ちる日が来たら、私もアナタと同じ場所に堕ちるから。」
強い眼差しで言い渡した。
冷たい手。
キツく結ばれた唇。
引き締まった頬。
そして、決意を漲らせて輝く、ぺールブルーの宝玉。
そう、そんな顔しちゃうンだ。
「僕を拒むの?
君は一人ぼっちになるよ?」
泣き出しそうな、でも、笑い出しそうな。
中途半端に唇を歪めたサムが、ソファーの下に隠していた長いナニカを蹴り出した。