花の名は、ダリア
クルクルと回った後、ダリアの前に横たわったのは、乾いた血がこびりついて尚、鋭い輝きを失わない日本刀。
ソージが腰に帯びていた日本刀。
「あの男は死んだ。
いくら待っても無駄だよ。」
サムはダリアから顔を背け、冷たく吐き捨てた。
が…
ハイ、マッハで後悔。
本当は、こんな風にあの男の死を報せるつもりじゃなかった。
彼女が『仕えし者』の国で生きることを受け入れ、そこでの幸せな未来に夢を馳せるようになってから、それとなく告げるつもりだった。
それもまた、卑怯かな?
それでも、あの男に随分なついている様子だった彼女を、出来るだけ悲しませたくないという一心だったンだ。
なのに…
(傷つけてしまっただろうか…)
サムは自責の念に駆られながら、横目でダリアを盗み見た。
泣いてる?
怒ってる?
彼女は…
笑っていた。
美しさは少しも色褪せないが、長い年月を重ねて全てを諦めてしまった老女のように…
ではなく。
この世はキラキラしているモノで出来ていると信じて疑わない無垢な幼子のように、あどけなく笑っていた。