花の名は、ダリア
日が昇る。
ブチ壊された壁から陽射しが差し込み、徐々に室内を侵食していく。
愛する人を孤独から救いたかった。
愛する人を幸せにしたかった。
ただ、それだけだった。
知らない間に願いは叶っていたンだね。
彼女にいつまでも寄り添う存在が、僕ではなかったというだけで。
「ねぇ、『ノエル』。」
歌うように囁きながら起き上がったサムが、日溜まりに向かって足を踏み出した。
立ち昇る煙に気づいて口を開きかけたソージを、ダリアがさりげなく手で制する。
「なぁに?」
「さっき言ってた、君の身体が朽ちたら同じ場所にっていうの…
約束してくれる?」
「もちろんよ。
私たちには天国なんて似合わないものね。」
ありがとう。
待ってるよ。
一度だけ振り返り、頬にエクボを浮かべて微笑む彼女を、目に焼きつけて。
両腕を広げて。
一歩。
また一歩。
光の中へ…
陽射しを浴びてサラサラと崩れていくサムのシルエットは、まるで十字架のようだった。