花の名は、ダリア
「バカですか!?」
記憶に深く染み込んだ光を目にして己を取り戻したソージは、鋭く叫んだ。
「返してください!
素人がそんなモン持っちゃ危険です!
てか、複数のアウトローを相手にするのはもっと危険です!」
なんとか立ち上がって、刀を奪い返したいケド…
立てない。
よく考えたら、奪い返すべきその刀が、杖代わりだったンだよね。
返して。
わりと切実に。
だがダリアは、必死感アリアリで膝を震わせるソージを見ようともしない。
彼に背を向けたまま、まるで歌うように囁く。
「平気よ。
私…
死ねないンだもの。」
「本気でバカですか!?
そんな冗談言ってる場合じゃ…
‥‥‥え?」
叱咤の途中で、ソージは言葉を失った。
ようやくダリアが振り返ったから。
振り返った彼女が、微笑んでいたから。
「ねェ、ソージ。
人が死を怖がるのは当然だわ。
未知なるものは、恐怖の対象だものね。
でも、拒んではダメ。
死も生と同様、神の祝福なのよ。」