花の名は、ダリア
「ねェ、ダリア…」
細い首の付け根に唇を押し当て、わざと吐息を吹きかけながら俺は囁いた。
ピクリと肌を震わせて。
微かに身じろぎして。
うつ伏せのまま頭を持ち上げたダリアが、背中に覆い被さる俺を見上げる。
「ん… ソージ…
なぁに?」
…
もう一回イタシちゃってイイデスカ。
いやいや、待て待て。
そーじゃない。
俺の名を呼ぶ甘やかな声と、俺に向かってトロリと流れた潤んだ眼差しに、脳が痺れるほど煽られたのは確かだが。
ソレはさて置き、そーじゃない。
滾る欲情を堪えてダリアの背中から身を離した俺は、彼女の隣に仰向けに寝転がった。
そして、彼女の視線を感じながらも天井を見上げたまま、静かに口を開く。
「このまま海を渡って辿り着いた場所で、二人で暮らしませんか?」
「うん…
いつもそうしてるじゃない?」
「そうじゃなくて。
止まり木で羽を休めるような滞在ではなく、ソコで『暮らす』ンです。
年を取らないと怪しまれるから、5年スパンで引っ越しですケド。」
「え… え?」