花の名は、ダリア
まぁ、そんなの杞憂なンだケドね。
バッタリなんて、まずあり得ないからね。
ココを訪れる者はいない。
知人も、この離れを貸してくれた植木屋の主人も、主治医ですらも。
なぜって?
この身体を蝕む死の病は、周囲を巻き込んでしまう。
近づけば近づくほど、親しければ親しいほど、感染の危険性は高くなる。
だから、見舞い・診察・暗殺・郵便・押売り…
ん?
なんか違うの混ざったケドも。
とにかく、全ての訪問を断ったのだ。
どうせ死ぬンだから。
誰にも迷惑をかけず、一人キリでひっそりと…
「ちょっと!旦那!」
ひっそりと‥‥‥
「旦那ってば!
寝てなきゃダメじゃないですか!」
ハイ。
ひっそりできてマセン。
「もう… バーサンは…
来なくてイイって言ったじゃねェか。」
立ち上がりもせず、振り返ることもなく、庭の鉢植えを眺めたままソージはボヤいた。
だって、見なくてもわかる。
声を掛けてきたのは、ソージがこの離れに来てからずっと世話をしてくれている、近所のバーサンだ。