花の名は、ダリア
(んー…
ま、殺られててもしゃーねェか。)
身も蓋もないコトを考えながら、ソージが刀身についたカシラの血と脂を振り落として目をやると、二人目の女は突き飛ばされでもしたかのように壁際に倒れて震えていた。
その側に、なんだかアンバランスになった身体を自らの左腕で抱いて立つダリア。
彼女の足元には、菊一文字を握ったまま転がる華奢な白い腕…
腕…
腕?
は?なんで?
よく見れば、痛みで床をのたうち回るカシラが右手に持った太刀は、ついたばかりの鮮血で濡れ光っている。
ソージが一人目の女を庇っている間に。
二人目の女を庇ったダリアの右腕は。
斬り落とされたのだ…
「ダリアぁぁぁっ!!!」
ソージの口から咆哮が放たれた。
俺は、バカだ。
アホカスクズだ、その他諸々のクソ虫全般だ。
バーサンの孫以外、女共なんてどうでもよかったのに。
犯されようが喰われようが、心底どうでもよかったのに。
そんなどうでもいい女を庇うために、一瞬でもダリアから目を離すなんて。
ナニしに来たンだ、俺は…
泣き出しそうに顔を歪めたソージが、ダリアに駆け寄ろうとする。
だが彼女は、残った左手を上げてソージを制した。