花の名は、ダリア
だが、開けた襖に手を掛けたままのバーサンは、不本意そうに皺だらけの顔を顰めた。
「自分でって…
だいたい旦那、本当にちゃんと食べてます?」
「もちろん。
バーサンのメシ、いつも旨ェよ。」
ごめん、嘘。
食べられなくて、ほとんど捨てちまってる。
「ほんとにィ?
ますます顔色悪いですよ?」
「ほんとだって。
日に当たってないから、美白肌が際立ってンだって。
この頃、調子いいンだ。」
ごめん、コレも嘘。
どういう状態が『調子いい』って言うのだったかすら、もはや思い出せねェよ。
でもね?
そんなの正直に訴えたところで、今更どーなるモンでもないから。
せめて、優しい人が気に病んだりしないように。
「さーて。
悪ィね、バーサン。
ちっと横になるわ。」
たらいから濡れた足を上げ、嘘に塗れた言葉を締めくくったソージは、さりげなくバーサンに退出を促した。
その時…
ガチャン
庭で、ナニカが落ちて割れた音がした。